(ゴド)←ナル←先生。

 

 

暖冬、ということでポカポカとした晴れた冬の日。

窓辺にあるフカフカの真っ白いソファ。

そこに猫のように丸まって寝ている無精ヒゲの男。

二時間前にかけてやったダークブラウンのブランケットがぱさりと音を立てて落ちた。

それを合図に、牙琉がひたすら眠り続ける男の身体を揺らす

「そろそろ起きたらどうだい・・成歩堂」

んん、と短く唸ったが成歩堂に未だ目覚める気配は無い。

仕方ない、と牙琉が立ち上がりそのままキッチンへと向かう。

(コーヒーでも入れてやれば起きるかな)

コポポ、とコーヒーメーカーから立ち上る香ばしい香りと湯気。

真っ白なカップを二つ。

未だ眠り続けている親友。

 

「ほら、コーヒー」

ふわりと漂う香りを彼の鼻先に持ってゆくと芳醇な香りに釣られ、成歩堂の目が微かに開く。

「・・・・・ぅ・・・」

「なるほ・・」

「かみ・・ぎ・・さ・・・・」

 

誰かと、勘違いしているのだろうか。

しばらく虚ろだった成歩堂の視線が段々と覚醒し、牙琉と、彼が持つコーヒーを見た。

眉間に皺が寄り、硬く拳を握っている。

最高に機嫌が悪い。そんな顔をしてせっかく入れたコーヒーを拒否されてしまった。

 

「コーヒーは嫌いだったかい?」

「・・・ああ、好きじゃないから」

 

 

 

そろそろ日が暮れる。

日差しが赤く変わって、そうしたら深い夜がやってくるのだ。

 

「僕、寝言か何か言わなかった?」

「・・・・いいや。何も・・・」

不思議な寝言の正体を牙琉は何となく察する事が出来る。

しかし聞かない方がいいし、きっと彼も答えてなどくれないだろう。

そっか、と少し安心した風の成歩堂がフラフラとミネラルウォーターを取りに行く。

すっかり冷めてしまったコーヒーには、やはり一度たりとも手を付けなかった。