カードを切る、手馴れた手つき。
だらしなく伸びた無精ひげと、くたびれたパーカー。
赤い液体の入ったグラスを飲み干すニット帽の男の仕草を金髪の男はやや目を細めてそれを見ている
「昔はビールばかり飲んでいたね」
「・・・年を取れば好みも変わるさ」
思い出すのはもう7年以上昔の日
ビール片手に赤い顔をした彼はとても上機嫌に色々な話をしてくれた。
親友がまた長期で海外に行った、職を転々としている幼馴染が店を開いた、所員として働いている元検事のおかげでとても助かっている、
どれも愛しそうに熱く語ってくれたのに。
目の前にいるニット帽の男からは覇気の無い目線と静かな声だけ。
金髪の男が一枚の書類を取り出し、目の前の男に差し出した。
「何?」
「君の興味を惹くものだろう」
差し出された書類に記された文字を転々と拾う。
裁判、事件概要、被害者、・・・・被告人。
しかしニット帽の男はその書類を興味なさそうにパラリと卓上に落とす
「こんなもの、飽きたよ」
「・・・・・・・・」
「今の僕にとっては・・・ただの紙切れだ。」
古びたランプが照らす店内はやや薄暗い。
金髪の男は書類を丁寧にカバンに仕舞いこむと静かに立ち上がった
「また来るよ、成歩堂」
「今度はポーカーの相手はしないぜ・・・牙琉センセ」
牙琉と呼ばれた男がその場を立ち去る
残された成歩堂という男は再びグラスを傾けていた。
end
ネタがかぶりそうな予感・・。